本会では平成23年春に、かかりつけ医向けのTIA診療ツールとして青ツールを、専門医向けに赤ツールを作成しました(県医師会ホームページで閲覧可能)。
青ツールにはTIAを疑えば、どのように診断にアプローチし、いかにリスクの層別化を行い、どのようなタイミングで専門医に紹介すれば良いのかを示し、赤ツールにはTIAの診断を「TIAか否か」ではなく、Acute Ischemic Cerebrovascular Syndrome(AICS)の分類を用いた共通の指標を提唱しました。
この取り組みが果たしてうまく機能したかどうかを検証する目的で、平成25年から1年間の前向き実態調査研究を行い、35施設から353例の症例を登録いただきました。結果として、青ツールに我々が示したリスクの層別化法の有用性が確認できました。すなわち発症1週間以内で、①明確な局所神経症状を呈したもの ②crescend TIA ③頸動脈高度狭窄 ④心房細動 ⑤ABCD2スコア4点以上のうち、1項目でもあれば可及的速やかに専門医へ紹介することで、脳梗塞の発症を抑えられることが示唆されました。また、AICS分類の精度の高さも統計学的に確認することができました。結局、かかりつけ医がTIA疑い例を見た場合、ABCD2スコアや青ツールの指標を使ってトリアージを行うことが大切であるとのシンプルな結論が得られたと言えます。詳細については論文をご覧ください。
神奈川脳神経科医会 会長 田口 博基