神奈川脳神経科医会では、2011年春に一過性脳虚血発作(TIA)の診療支援ツールとして、かかりつけ医向けの「青ツール」と専門医向けの「赤ツール」を作成しました。これらのツールは、TIAが疑われる際の診断方法、リスク評価、専門医への紹介タイミングなどを明確にし、本ツールを使った医療連携の有効性を示す研究(COMBAT-TIA Study)にも活用されてきました。
その後、TIAの定義変更や非局所性神経症状の重要性が議論される中で、ツールの見直しが必要となりました。そこで2023年より、神奈川県内でTIAや脳卒中を「急性脳血管症候群(ACVS)」として捉え、医療連携を強化するために「ACVS委員会」を設立。青ツールの更新を進め、医療・介護専門職が連携して対応できる体制づくりを目指しています。
ACVSを発症した方は、10年後も脳卒中のリスクが高いとされており、初期対応だけでなく、継続的な予防やリスク管理が重要です。医療・介護職がその指導的役割を担い、地域に根ざした連携の効果を客観的に評価・発信していく予定です。
また、神奈川県が推進する「かながわ健康プラン21」では、健康と病気の間の状態を「未病(ME-BYO)」と定義し、日常生活の中で改善を図ることが重視されています。これに連動し、ACVSを「未病」の段階で捉え、医療職・介護職・一般市民への啓発や教育活動を広げるためのプラットフォームづくりも進行中です。
今後は、カード形式のツールに加え、アプリや教育動画の活用、さらには神奈川県の健康管理アプリ「My Me-byoカルテ」との連携も視野に入れ、より効果的な情報提供と支援体制の構築を目指しています。
神奈川脳神経科医会 代表幹事 島 浩史